CROSS TALK対談「教育」と「デザイン」清水貴栄 x 佐藤正和 (NHK Eテレ プロデューサー) 「とにかく若い人と仕事がしたかった」(佐藤さん) ー まずはじめに、おふたりの一番最初のお仕事とそのときの印象について、お聞かせください。 佐藤さん(以下敬称略)「NHKエデュケーショナルでQという哲学番組を企画していて、当時「デザインあ」の反響でビジュアルの重要性を実感していたので、新しい番組もビジュアルを重視してくれるクリエイターさんとつくらないといけないな、と色々調べていたなかでDRAWING AND MANUALのウェブサイトで会社のコンセプトを読んで「図画工作」か、いいな、って」 清水「メールいただきました」 Eクリ プロモクリップより 「Q〜こどものための哲学〜」オープニング映像 佐藤「ミッドタウンでやってたEクリで清水さんのつくったクリップ見て、Qの求めているトーンにマッチするなと。清水さんがいたから、声をかけたということはありますね」 清水「ここでお会いしました、5年前ですね」 佐藤「とにかく若い人と仕事をしたかったんです。デザインあのチームで、大御所にああしろこうしろっていえないですし、お忙しいですからタイミング見計らってあれもこれもお願いしなくてはいけなくて。ゆったりと、じっくり腰を据えて年の近い人たちとやりたいっていうのが優先順位の一番でした」 清水「はははは」 佐藤「だからすごく楽しかった。なんでも言えるというか。面白いと思うものもだいぶ共有できていたので。だからこれだけ続いているっていうのもあります」 清水「そうですね、長いですね」 佐藤「Qを一本作って、いきなりNHKの社長賞をいただいたんです。評判がすごく良くて。前のQくんでしたけどね。気持ち悪くてね、当時はカワイイって言ってたんですけど見返してみるとゲって思いますね」 清水「前のはだいぶ狂ってましたね、目がこんなんなって…(笑)」 佐藤「でもあれだけ反響があったってことは当時の視聴者も違和感を感じていなかったということですよね」 清水「(企画書を振り返り)最初はコラージュでやってみたりとかもありました。りんごの提案はこれですね。この時は(林)響太朗が一緒にやってて」 佐藤「そこでびっくりしたんだよね。個人的に組んでいた「デザインあ」の学生ブレストチームがあって、定期的に学生さんの柔らかい頭で色々企画を考えてもらってたんです、ノーギャラで(笑)」 清水「わはははは」 佐藤「そこに響太朗くんがいて。就職活動してるっていうのは知ってたんだけど、打ち合わせの時にいて驚きました。」 清水「最初から実写もいいですよねって話して」 佐藤「人形劇ベースなんだけど、こういったいわゆるスタイリッシュな映像を入れていくことで、大人目線も意識しながらつくりました。りんごのキーアイテムは提案していただいてすごくいいなって」 清水「重力を発見した時をイメージして、それを疑ってみよう、っていうアイデアで」 佐藤「立ち止まって考えてみる、という意味で時間を遡っていたりとか、APPLEっていうのは欧米圏では一番最初に習う言葉なんで、根っこに戻って考える意味も込められるな、いいな、と」 初期のQくん 番組ロゴ企画 オン・マイ・ウェイ ロゴA案 オン・マイ・ウェイ ロゴB案 オン・マイ・ウェイ ロゴC案 清水「その次が、「オン・マイ・ウェイ」ですね」 佐藤「NHKエデュケーショナルから本体に戻ってドキュメンタリーの道徳番組の企画をしていて、ビジュアルパッケージを清水さんにお願いしました」 清水「(企画書をみながら)セットがラジオっぽいと聞いていたので、この時僕、A案を推していたんですけれど、意外でしたね。佐藤さんが選んだのがC案でした。この時は水井(翔)くんとやっていたんで、 B案は彼の提案で。」 佐藤「なんでこれ選んだんだろう」 清水「なんでかすごい気になりました」 佐藤「わかんない」 清水「ははははは」 佐藤「番組自体は、答えを提案せずに問いを投げかけて終わる。それを受け取ってクラスで考える構造なので、そのモヤモヤ感を出したかったのかもしれない。当時人気絶頂のmiwaちゃんというティーンのカリスマを通して、Eテレを観なくなった10代の子たちに聞く耳を持ってもらいたかった。miwaちゃんはずっとラジオもやっていたので、個人に語りかけるイメージで密室感のあるラジオブースというセットにしました。コンクリートじゃないウッディなセットだったのでこっちのロゴの方が色味もあっていたんですよね」 清水「僕だいたいプレゼンの時、選ばれそうなやつをAに持ってきてて」 佐藤「それ僕聞かない方が良かったんじゃない?」 清水「もうこれだけ長くやってるからいいかな(笑)。言わない方がいいですか?」 佐藤「もう聞いちゃったし(笑)」 清水「Bは安定しててみんなが好きそうなやつをもってきて、Cが自由な発想でやってるのが多くて。僕のプレゼンでCが選ばれるってあんまりなかったから、この時おぉ〜面白い!って」 佐藤「あとはロゴとして文字の配列がキュッとなってワッペンにもなるような、塊感ていうのを求めてたかもしれない。グッズ展開とかしたかったのかも。丸の中に収まっても余白がないというか」 清水「ここからかなり読める感じにブラッシュアップしました(笑)」 ー そのあとが「TAKE TECH」でしたね 清水「ですね。これは菱川(勢一)さんが関わってました」 佐藤「当時、中・高の技術番組をつくりたいと思って教科書を色々集めて見てました。僕も技術って中学でやったんですけど、全然面白くなくて。結果何かを得た感触もなく。最初はプログラミングやったらいいみたいなムードがあったんだけど、もっと手元にある技術を理解してからじゃないといけないなって。これだけ生きてきて、携帯がどうやって音声を届けるのか、マイクの音が大きくなるのはなぜかとか、当たり前にあるブラックボックス化しているテクノロジーの中身を毎回ひとつの「キーテック」として出す。それは授業でちゃんと習うものなので、番組をみて興味を持ってもらえたらと思って企画しました。技術って、僕らの手を離れて専門家や技術者のものになってしまっているけれど、それをもう一度自分たちの手元に戻す、技術を道具にして何かをする、というマインドを育む番組として作りました。ちょうど時期的に菱川さんが21_21 DESIGN SIGHTで「動きのカガク展」というのをやっていて」 TAKE TECH ロゴ提案 清水「展示をみてから、お願いしようと思ったんですか?」佐藤「そう。テイクテックは企画としてあって、タイミングよくそういう展覧会があったので」 TAKE TECH ロゴ A案 清水「(企画書を見ながら)この時は、形容詞を最初につけてプレゼンするっていうスタイルで会議室で案を全部並べて。菱川さんも一緒にプレゼン行ってたんですけど、全部やっちゃいなとか言われて(笑)」 TAKE TECH ロゴ B案 佐藤「テイクテックは、技術を使おう!っていう呼びかけでもあるので、やっぱり訴えかけてくる感じが一番あったのが、これ(C案)でした」清水「はははははは。ネーミングが毎回いいですよね。語呂は大事にしてます?結構考えます?」 TAKE TECH ロゴC案 佐藤「考えます。語呂ももちろん、響きも大事だし。こどもが口にしやすい、とか」 NEXT page features top