CROSS TALK

対談「教育」と「デザイン」

清水貴栄 x 佐藤正和 (NHK Eテレ プロデューサー)


大人に観てもらうためにパッケージ作ってます。(佐藤さん)

 
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「自分の中にすでにあるものに外から

ボールを

当ててもらう感触」(佐藤さん)

ー デザインの提案を受ける時、驚かされたいですか?それとももうすでに自分の中にあるものを具現化してもらう感じでしょうか?

佐藤「提示されて、自分が思い描いているものがわかる感じです。自分の中では見えてないですけど、明らかにこれじゃない、これだっていうのははっきりある。あるということはすでに自分の中にあるということで。それを外からボール当ててもらうというか。それで毎回投げてもらったボールを、そうそうこれこれ、って」

清水「ははははははは」

佐藤「っていうのがあるから、こうやって毎回一緒にお仕事できている」

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仕上がりをスタジオで見て、ものすごいのをつくったなってみんなで言い合ったのを覚えています。(清水)

 

ー 先ほど話していたプレゼン企画の提案の並べ方からも、清水は相手の欲しいものを探りながら提案していくタイプだと思うんですが、佐藤さんは探ってもらいたいタイプだからお互いマッチしているんでしょうか。

佐藤「基本、清水さんから出てくるものは嫌いじゃないっていうのは大きいと思うんですけど」

清水「ありがとうございます」

佐藤「生理的に合わないものってやっぱりあるじゃないですか。そういうものが絶対に出てこないので安心してお任せできてます」

清水「過去ってどうされてたんですか?」

佐藤「ノージーtupera tuperaさんで、シャキーン!は、いぬんこさんていうイラストレーターさんにお願いして。それなりにこだわって作ってました」

 

ー こども番組をつくっていてビジュアルを決める上で、子供に届けるという意味で気をつけていることってありますか?

佐藤「気にしてないです」

清水「ははははは」

佐藤「いやむしろ、大人に観てもらうためにパッケージ作ってます。こども番組だからこそ、チャンネル権が親にあるので、親にいいと思ってもらえるビジュアルというのは意識しています。こどものことだけを考えていたら多分こういうビジュアルにはなってないんですよね。でも多分そういうデザインは大人は観ないんです。というところで、番組のパッケージは大人が観て、素敵な番組だね、何観てんの?っていう。子供番組というジャンルの中にそれがあった時に子供番組っぽくないというか。それはデザインあをやった時にすごく実感して。「うちの子デザインあ、みてます」みたいな。デザインあを観てる子供の後ろ姿を撮ってSNSにあげたり、暗に、うちの子感度いいんです、みたいな」

清水「ははははははははは。なるほど(笑)」

佐藤「嬉しさもあり、ね。そういうものに触れる親の喜びも大事なんです。その大事な部分をいつも清水さんに担ってもらっている、そしていつも正解を出してもらっている。これだけ番組がウケるということは、正解ということなんで。どの番組も全部ウケているので」

清水「最初に大人でもいいな、って思えるものを、と聞いてました。いわゆるこどもっぽいものはつくらず、もちろんじぶんも良いと思えるものをつくろうと。例えばロゴが入ってるグッズを自分がもてるかもてないかっていうのは考えながらつくってました」

佐藤「ノベルティできた時に自分が持ちたいかっていう」

清水「けっこうおっきいですよね」

佐藤「それがはいってるんだったらいいや、みたいなのはね」

清水「テイクテックはステッカーあったら貼るな〜とか」


ー ちなみに自分たちの意図しない反応にびっくりしたこととか、裏話的なものがあれば聞かせてください。

清水「いろいろありますね」

佐藤「u&iまでは、キャラクターデザインは僕がわりと「こんなふうな」っていうのを、絵を描いてご相談してたのでびっくりすることも少ないというか」

清水「JAPANGLEからですかね」

「JAPANGLE」キャラクター

「JAPANGLE」キャラクター

「JAPANGLE」キャラクター案

「JAPANGLE」キャラクター案

佐藤「たくさん画像を送って、最終的には絵を描いて送ったの覚えてます」

清水「JAPANGLEのキャラクター設定は提案させてもらって、(キャラ提案を見て)これを送って。キャラクターが落ち着くまで結構道のりが長かった記憶があります。アートディレクターが佐藤(卓)さんていうのもあって、結構戦いが。ここになるまでが長かった」

佐藤「最終的にはすごくいいものができあがりました」

清水「仕上がりをスタジオで見て、ものすごいのをつくったな、ってみんなで言い合ったのを覚えています」

佐藤「造形の人がすごく優秀でした。絶妙ですよね、一見グロテスクだけどずっと見てると可愛らしくなってくる。JAPANGLEは特に大人に観てもらいたい番組だったので、海外では人形劇という時点で大人は観てくれないんです。幼児番組しか人形は出てこないと。でも人形は使いたかったのでちゃんと大人にも向けたデザインの人形じゃないといけないな、ということで普通こども番組に出てこないような、リアルでちょっと気持ち悪い感じを出すことで、大人にも受け入れてもらえて。案の定、賞ももらって大人にもちゃんと届いてます」


ー 3ヶ国語放送ということで、海外の目線は意識されてビジュアルもつくっていたんですね

佐藤「これははなから2020年を見据えて、日本の文化を海外に向けて発信するというのが一つの柱だったので世界の大人の人に観てもらうということがまず到達点としてあったので、そのためにはどういうビジュアルにしないといけないのかっていうのはありました」


ー 日本らしさがとても顕著なデザインですね

佐藤「日の丸と同じ白と赤のみを使って、障子や鹿威しは途中で入れました。これのひとつ前の案が、僕がオーダーしたんですけど、書斎とか実験室とかをイメージしたごちゃごちゃした感じで。外国の人が好きな日本のお土産とか並んでて、いいなって思ったんですけど。卓さんに一蹴されて(笑)」

清水「ははははは…」

「JAPANGLE」背景

「JAPANGLE」背景

「JAPANGLE」旧背景案

「JAPANGLE」旧背景案

佐藤「きたないって(笑)。でもこれ(最終形)いいですよね」

清水「良かったです、結果的に」

佐藤「合間合間のコーナーの情報量が結構あるので、ここでもごちゃごちゃしてると疲れちゃうんです。このぐらいスッキリしている中にキャラの濃い二人がいる。番組全体としての、このセットと、このキャラっていうのがちゃんと意図されたもので、結果良かったと思います」


ー ロゴは佐藤卓さんですね

佐藤「ロゴはやらせてほしいと」

清水「素敵なロゴでした。綺麗で」

佐藤卓さんデザインの「JAPANGLE」ロゴ

佐藤卓さんデザインの「JAPANGLE」ロゴ