CROSS TALK
対談「教育」と「デザイン」
清水貴栄 x 佐藤正和 (NHK Eテレ プロデューサー)
ー 清水さんは?
清水「ゲームで育ったんで、僕は。ポケモンとかです」
佐藤「キャラクターいっぱい覚えて」
清水「そうですそうです。「ポケモン言えるかな」っていう歌があって。1から151までのキャラクター全部言えてました。今はもう全部は覚えてないけど。中央に全身黒タイツのイマクニ?ってキャラがいるんですけど、当時任天堂の社員の人だったらしくて。この間ポケモンの仕事して名刺交換したら、今国さんという方で、え、今国さん!!!って。本物だったんですよ、でカードくれました。イマクニ?っていうポケモンカード。うわぁ〜すごすぎる〜〜ってなってました、その時。ってくらいポケモンはハマってました。外で遊ばずにひたすらゲームやってました、ちっちゃい時。体がちっちゃかったんで僕。喘息持ちで。あんまり運動が得意じゃなかったんです。中学校は卓球部で、運動部に入りたいけど、バスケとかサッカーは無理だから卓球だったら身長低くてもなんとかなるかって」
佐藤「絵は?」
清水「転写が好きで、ポケモンキャラクターをずっとなぞってました。自分から描く絵がそんなやってなくて、だから上手くならなかったんですよ、絵が。」
佐藤「でもなぞってると上手くならない?」
清水「その時身についた能力は絵を描くことに生かされなかったというか(笑)」
佐藤「コラージュは?」
清水「自分の特技を見つけなきゃって思ってた時に大学でコラージュやってる人と出会って、これだったら無理なくできるな、って。テクニックがそんなにいらない、って言ったらアレですけど、白い紙にゼロから描くよりはもうすでに素材があっていろいろ考えて配置できる。もしかしたらデザインと一緒なのかもしれない。お題があって、それに付随する情報とかを並べ変えたり整理したりする。そういうのが得意だったから、仕事始めてからもハマってやってて、会社でもゴミ捨てる前に「これいる?」って聞かれる時期がありましたね(笑)。それはさすがにいらない、みたいな。今でもたまにやってます。
コラージュ療法っていうのがあって、箱庭療法ってあるじゃないですか?あれと同じような。3回くらい講習を受けに行って。先生とされる人が雑誌の山持ってきて、特に指示もなくじゃ始めましょうって言って貼っていくんです。で、それぞれ発表するとなると、静かそうな人も、結構喋る。先生は何も言わないんですけど、これは昨日こういうことがあったことを表現してます、みたいな。でそれ全部言うと、あれ、結構スッキリしてる、っていう療法なんですけど。すごい面白くて」
佐藤「絵よりもとっかかりやすいもんね」
清水「そうですそうです」
佐藤「いじってるうちになんとなく形ができてきて」
清水「その通りです」
清水「コラージュをどう深掘りしていくか、っていうことを考えていた時に見つけて。哲学ワークショップもやりました、会社で」
佐藤「深められました?」
清水「会社でやった時は好き嫌いが分かれました。人の話を聞くのが耐えられないのか、ダメだ向いてない、ってなっちゃう人が何人がいました」
佐藤「面倒くさいんですかね」
清水「好きな人は、もういっかいやりたい!って。「お金」とか「死」とかをテーマにもやりました」
ー 結果を求める人は苦手なんじゃないですかね。「これやってなんかなるの?」って
清水「男に苦手な人が多いのは、それが原因かもしれない(笑)。佐藤さんて、女性に感覚近いとかって感じることあります?」
佐藤「感覚が近いかはわからないけど、女性との方が仕事がうまくいく。男の人とは…あんまり楽しくは仕事してない気が(笑)。これだけやりたがりの人だから、それはそうなっちゃうよね。男の人はやっぱり、自分の痕跡を作りたいというか。俺がやった!ってものにしたいから。その辺はまだまだ僕、成仏しきれてないところがあるので。」
清水「成仏…させないでください(笑)。僕自身女性的な部分かなりあるので、女の人から見てどうかわからないですけど、女兄弟の末っ子で。うちのスタッフでいうと、いよりさんとか高橋さんとか意思疎通が早いです。水井くんとは何度かぶつかって。」
佐藤「男はやっぱり自分の実績残したいですからね。僕のここ数年の課題でもあるんですけど。育てることに喜びを感じる上司に、いつかはならないといけないな、と。自分のやりたいばっかりだと男の子とうまくやっていけないので(笑)。女の子は、それをあんまりストレスに感じてないのか、賛同してくれるんですけど、男の子は、上司だからいうこと聞くけど…、みたいなね」
清水「自然になれるもんですかね、意識的に、下を育てよう!みたいな」
佐藤「育てようと思って…ない。そういう風に、いつかはしないといけない。でも変なものに自分のクレジット出せないし、案件抱えすぎてて自分でやった方が早い、とかね。台本、プロデューサー書いちゃだめでしょって思いながら、カット割りやってコンテまでつけちゃって」
清水「笑」
佐藤「それ渡されたらそれやらざるを得ないですよね。ま、こうやって清水さんとお仕事してそれぞれの番組がすごく評価されてるから保ててるわがままですけどね。ありがとうございます」
清水「ありがとうございます(笑)。今日振り返りながら、こんなにたくさん、長い時間色々やらせてもらってたな、って。毎回学びがあって、最初のオリエン聞くたびに「面白そう〜!」って思って、やる!みたいな。今日の「場」の話も、次そっちいくんだ〜、どうやってやるんだろう、ってすごい気になる」
佐藤「最終的には劇場主になりたいんですよ」
清水「へぇ〜〜、それってどうやるんですか?」
佐藤「買ってないけど、宝くじ当たったら小屋を作りたい」
清水「それって夢、ですか?」
佐藤「それに向かって何かしているわけではないけど、お金があったら、ってことで。」
清水「なるほど。」
ー お笑いをやってた時期があると伺ったんですけれど
佐藤「かじった程度ですが、やっぱりそこで感じた「ライブのコミュニケーションに勝るものはない」っていうのはあります。所詮テレビは一方通行なので、伝えた気でいるけど伝わってないだろうな、っていうのもある。やっぱり目の前にいる人と繋がって何か考えたり表現する方がその人の心には残る。だからそういう場に携われるようなところにはいたいです。ライブはすごくパワーを使いますけど、だからこそ、本気汁が出て人間らしさが出て、面白いんだと思うんです。テレビは遠いところで顔が見えない人に向けてやってるので、まぁ都合良くはできてます。」
しっかりとした社会意識をもち人類へ対する希望を捨てず正しい未来へと進もうと子どもたちへメッセージを送り続ける佐藤さんと、佐藤さんのメッセージを伝えやすくわかりやすいものにビジュアルへと落とし込む清水さん。お二人の信頼関係と制作に対する意欲が伝わってくる対談でした。クライアントとクリエイターの関係性が成果物へ与える影響みたいなものを垣間見た気がします。
INTERVIEW & TEXT : 河村瑞英