CROSS TALK
対談「教育」と「デザイン」
清水貴栄 x 佐藤正和 (NHK Eテレ プロデューサー)
情報処理速度が上がった今、映像ロジックでノーナレーションでも成立するものを作らないといけない (佐藤さん)
教育番組もミュージックビデオも、同じデザインマインドで取り組む(清水)
ー「教育」と「デザイン」の関係性について。最近の教育番組はビジュアルやデザイン性が重視されているものが増え、その代わりことばが減っていって、その辺のバランスをどうお考えでしょうか?
佐藤「僕がパッと思いつくのが3つ。まずテレビという媒体でやる前提で考えた場合。どんどん速度が上がってるんです、情報処理の。こどももテレビ観ながらスマホ見てるみたいなことができちゃう。YouTube観てテレビほとんど観ないような子がいる中で、短時間でパッとわかるようにしてあげないとすぐに離れちゃう。という状況がまずあるところでのテレビ番組は、今までは最後まで観てくれる前提だったので起承転結でロジカルに噛み砕いて丁寧にっていうことができたけど、今は最後まで観てくれない。でも短時間で分からせないといけないという意味では言葉とかじゃなくて、映像でパッとわかるようにしてあげないといけない。下手したら無音にしててもなんとなくわかるというか。ビジュアルで伝えるという表現方法じゃないと、やっていけないかな、と僕は思っていて。そういう意味でも映像ロジックでノーナレーションでも成立するものを作らないといけないというのが映像デザインというものを重視する一つの理由です。
もうひとつはEテレでやる前提で考えた場合。Eテレの教育番組って一回作ると5年くらい擦り倒すんです。賞味期限が長いコンテンツにしないといけないので荒っぽいものは耐えられない。しっかりデザインされていて情報が整理されているものじゃないと、何回も観るということに耐えられないという意味で、映像デザインはしっかりしていないといけない。
あと繰り返し、僕個人としては子供だけじゃなくて親にも観てもらいたい。僕が作る番組は常に親子で楽しめる番組にしたいと思っているので、私たちにも向けてくれてるんだな、ってことが匂う映像デザインにしないといけない。音楽も然りです」
ー教育番組って視聴者が見え易いというか、広告やミュージックビデオの仕事よりもターゲットが限定できてる気がするのですが、制作する上でターゲットは意識しますか?
清水「作ってる僕としてはターゲットが変わっても、やってることはそんなに変わってなくて。Eテレだと、単純にわかりやすくなければいけない、っていうのがベースにあるんですが、ミュージックビデオだと対象がそのアーティスト本人なんで、どういう意図でやっているかっていうのを、アーティスト本人だったら映像観てわかってくれるな、って。だから基本的にミュージックビデオの仕事もEテレの仕事も僕は意識的には何も切り替えないでやってます」
佐藤「僕もそこは求めてないです。そこは僕が考えればいいことで、意味づけとか使い方はね。お題を受けて今の清水さんから出てくる美しさだったりカッコよさだったり、だけでいい。それをどう使うかはこちら側の仕事なので。案を出してもらってそこからの伝わりやすさだったりする細かい調整はこちらでやります、と。最初からそこの視点は求めていないです僕は。ですよね?」
清水「そうですね。ただ、いろいろやっていくうちにどういう展開でやったら番組上使いやすいかというのはだんだんわかってきて。先日新しい番組の仕事させていただいて、その時は割とそこまで考えた状態でプレゼンしたり。最近は考えながらやってると思います」
「プロのプロセス」
ポカリスエット CM
<NHK>2020応援ソング「パプリカ」
ー教育以外の映像では?
佐藤「本当最近でいうとポカリスエットのCMですね。三人の公募されたダンサーが学校というシチュエーションで、三人それぞれの一筆書きが最後ビタって揃うんですよね。あれはすごいうまく構造ができてるなぁって。ポカリスエットのターゲットである十代の若い子達に向けたプレゼンテーションとしてすごくいい。熱量もすごく感じるし。青春、って感じが」
清水「ここ数年、多いですよね、ダンス。屋上とか芝生で踊ったりとか」
佐藤「映像として、一筆書き三つが集まって一つになる。3カメが同時に動いて、ひとつに集まる」
清水「一気に撮ってるんだ」
佐藤「パプリカの振り付けをしてくれてる辻本さんが振りをつけてるんです、っていうのきっかけで観たんです。で、辻本さんは一筆書き好きなんですよね」
清水「はははははは」
佐藤「パプリカのPVも一筆書きの一発録り」
清水「これは3カメ同時に撮ってるんですかね」
佐藤「だとしたら超すごい。うまいこと考えたな〜、って思いました」
清水「僕はSpike JonzeのApple HomePodのCMかな」
佐藤「すごいなぁ。商品の機能とか全然関係ないんだね」
清水「聞いた気持ちを映像にしましたみたいな(笑)」
佐藤「トリッキーな映像を作って話題にして商品に結びつける。お金があるからできることですよね。お金だけじゃないけどね。もちろんイマジネーションも、すごい思いつきですよね」
清水「僕が大学の時は辻川幸一郎さんとか、ギミックあって、映像だからできる魔法のような、そういう手法を使って伝えたいことを伝えていくっていうようなのが盛り上がってた時期だったんでその影響はすごく受けていて、久しぶりにこういうの観たんですよ。その時の波が今はもうなくて、どっちかっていうと今は響太朗みたいな綺麗でいい感じの映像が増えてきてるんですけど。ギミックとか使わないような」
佐藤「ドラマっぽい情感たっぷりの」
清水「そうですね。JAPANGLEだとギミックっぽい手法も使いますよね、同ポジとか」
佐藤「あんまりすごいことはやってないですけどね。ミュージックビデオはギミックで遊んでもいいと思うんですけど。教育番組でも歌とかはいいですけど、伝えるべき情報をまず伝えないといけないので、フィルターでガチャガチャ遊ぶとそこが伝わってこない、っていうのがあってなかなか使う機会があんまりないのかもしれない。あと僕はそういう引き出しがないので。もの観てないしね(笑)」
「JAPANGLE 寿司の回」
「JAPANGLE トイレの回」