
菱川勢一巡回写真展
“存在しない映画、存在した光景”
Seiichi Hishikawa Photo Exhibition
Found stories from a movie that doesn’t exist.
2011年、京都HOTEL ANTEROOM KYOTOでの開催を皮切りに、東京では六本木 Mercedes-Benz Connection、2012年初頭には金沢駅コンコース、そして旧東京電機大学11号館の校舎にてアートプロジェクト「TRANS ARTS TOKYO」の一貫で開催した菱川勢一巡回写真展「存在しない映画、存在した光景 - Found stories from a movie that doesn’t exist」。
映像作家ならではの視点が織りなす写真世界、その一枚一枚の写真に添えられた人生讃歌とも言える写真から創造されたシナリオ。まるで「映画の1シーン」のような写真世界が、独自の展示方法で展示されます。
会場では展示写真に加えて20作品を収録した短編集「存在しない映画、存在した光景」と、映画のような写真世界を表現した3アーティストたちによってつくられた音楽CD「存在しない映画、存在した光景 オリジナルサウンドトラック」が販売された。映画を鑑賞するような展示は多くの観客を魅了した。 今後また世界のどこかにで突然出没する予感のするシリーズ写真展である。
2011年京都展 会場 Hotel Anteroom Kyoto
京都のHotel Anteroom Kyotoのギャラリー全面を大型のライトボックスで写真が埋め尽くした。レセプションロビーからエレベーターホールまでの壁一面に写真と物語が並ぶ。まるでホテルの宿泊客へ旅の反芻を促すかのごとく。それぞれの場所でふと目にした光景にそれぞれの物語が存在することを気づかせてくれる一篇一篇として。
2011年東京展 会場 Mercedes-Benz Connection
菱川の写真には度々道路が出現する。ストリートフォトであるがゆえのものである。道には出会いと別れが毎日のように存在する。そして道はしばしば人生そのもののメタファーとして表現される。写真展の会場としてメルセデスベンツのショールームが選ばれたのも道という存在と物語の深い関係性がある。どちらの方向へ進むかは今日の気分次第なのだ。物語も今日また道で生まれる。
2011年金沢展 会場 金沢駅コンコース
駅という人と人が交差をする場所に写真と物語を置く。いつもの通りで見過ごしてしまいそうな風景の中に見つける小さな物語。それこそが菱川のライフワークとなっている「存在した光景」であり。まるで映画の出来事のようなことが日常の中にあるということでもある。
2012年東京展 会場 旧東京電機大学校舎
取り壊し寸前の校舎。センチメンタルな風景の象徴である。夢を語り合った場所。挫折した場所。未来を探した場所。出会いの場所。学び舎が持つ空気の中に物語を置く。蘇る記憶を噛みしめるように一篇を味わう。流れゆく風景も見えなくなるほど毎日が速力を上げて過ぎ去ってゆく中で消える運命のある場所でささやかな思い出に浸る時間を設置した。