Installation Art

所属作家のアート作品を製作し、国内外のさまざまな場所に展示しています。お問合せはContactから


菱川勢一インスタレーション作品

「Dappled Light Suite#1」

6min / 12 displays + 12 Speakers

2025年10月28日 ~11月16日
臺中市立美術館 Taichung Art Museumにて展示

10/28より台湾台中のTaichun Art Museumにて展示中です。この美術館&図書館は、日本の金沢21世紀美術館などを手がけたSANAAが設計・デザインしたことでも注目されています。作品はエントランスロビーの大きな吹き抜けの空間に12台の映像画面と12台のスピーカーによってまるで映像のオーケストラのように色彩とリズムを奏でています。台中中央公園の緑に囲まれた場所で自然から得たインスピレーションで創作したインスタレーションアートを年齢問わずにたくさんの人々に楽しんでいただける作品です。

Dappled Light Suiteとは?

「木漏れ日の組曲」という意味です。

木漏れ日がリズムを生み出し、それぞれが共鳴してやがて協奏していく。葉や枝の間から光と影を創り出すシンフォニー第一番です。今回は季節になぞらえて12台のディスプレイがそれぞれ違った色彩と音を奏でます。それはまるで小さなオーケストラのように。

<アーティスト・ステートメント>
私はこれまで、国や文化、時代や仕事の枠を越えて、多くの人と一緒にものづくりをしてきました。けれども、今ほど大きな変化を強く感じたことはありません。
テクノロジーの波は、時に厳しい挑戦をもたらしますが、同時に新しい可能性への扉も開いてくれます。

新しい美術館のオープニングに作品を展示するにあたり、大切なのは、未来を生きる子どもたちの目を見つめることだと思いました。大人たちの中でテクノロジーを利用して「これくらいでいい」と妥協する空気が広がる中でも、子どもたちの目はまだ澄んでいて、広い想像の世界を映しています。だからこそ、考える力を育み、芸術の火を絶やさないことが、私たち大人の役割です。
人の創造力は、この不安定な時代を導く灯りであり、未来への橋をかける力なのです。

自分の感覚と手でつくることをやめない。
その姿を子どもたちに見せるとき、彼らの手に託される未来はただの明日ではなく、希望にあふれた新しい地平になります。

この作品の名「Dappled Light Suite」は、木漏れ日が生み出す旋律のように、自然からインスピレーションを受け取り、自分の創造をふくらませていくことを表しています。
木漏れ日の光に耳をすませるように、子どもたちが自らの未来を豊かに育んでいけることを願っています。この美術館がいつも笑い声で溢れていますように。

Artist

Seiichi Hishikawa

Sound Design

Seiichi Hishikawa

+

Shinya Kiyokawa

Co-operation

Executive Producer

Goldilocks Production

Technical support

2ENTER, Foison art

First Appearance at Taichung Art Museum, Taiwan 2025


菱川勢一映像インスタレーション作品

「Siren in the Silence」

15min / 8K / Spatial Audio

2024年9月20日 ~11月1日
北海道白老町 ルーツ&アーツしらおい2024会場にて上映


この作品のテーマは「調和」と「共鳴」です。日本の伝統的な「おりん」を自然の中で鳴らし、禅の精神を現代の人たちに再度気が付いてほしいというメッセージが込められたポエティック・ドキュメンタリー作品。

自然はいつも共存を求めてきました。

でも、私たちはその呼びかけに耳を傾けようとしませんでした。

この「おりん」は、日本の伝統的な仏具です。

自然の中でおりんが鳴ります。それは、心をひとつにし、純粋な気持ちになるための合図です。

争いの終わりの合図を鳴らしましょう。

私たちが変わる合図を鳴らしましょう。

おりんが響きます。自然と共に調和するために。

Artist : Seiichi Hishikawa

Orin provided by Shimatani Syouryu Studio Co., Ltd.

Orin Manipulation: Yoshinori Shimatani, Seiichi Hishikawa

Voice: Tim Stephenson

Location cooperation: Abe Farm, Shiraoi Town

Production Management: Kosuke Nakaya (kuwaku)

Production Cooperation: DRAWING AND MANUAL


菱川勢一インスタレーション作品

「Karmen」

4K x 5 Screen Video Installation Art / Spatial Audio / 5min

台湾 高雄市 Pier2 にて 2023年11月3日〜12月3日に展示

台湾・高雄。
その街の空気には、鉄の匂いと潮の香がまじりあっている。
港町の工場群では、炎が呼吸し、機械が唸り、人の手が金属の魂を目覚めさせる。
菱川勢一は、その現場に身を置き、900カットに及ぶ鉄の変容を記録した。
それは単なるドキュメントではなく、鉄という物質が、時間と人間とともに「歌いはじめる」瞬間を捉えようとする試みだった。

完成した映像インスタレーション《Karmen》は、オペラ「カルメン」の名を借りながら、高雄=Kaohsiungの“K”を冠し、都市そのものを歌姫へと変貌させる。
火花はリズムとなり、油の香は旋律を運び、轟音と静寂は絶妙なテンポで呼応する。
そこに響くのは、テクノロジーと人間の共鳴であり、現代の産業が奏でる壮大なアリアである。

鉄の表面に映るのは、労働の汗ではなく、創造の光だ。
機械の正確さと人の曖昧さがせめぎ合い、その境界で“美”が生まれる。
菱川はそれを見つめ、音の詩人・清川進也とともに、鉄に声を与えた。

4K映像による5面のスクリーンが空間を包み、映像と音響は精密に編まれた織物のように、観る者の感覚をゆるやかに包み込む。
そこでは、工場は劇場となり、職人は奏者となり、都市はひとつの楽曲となる。

――《Karmen》。
それは、鉄が歌う詩であり、
高雄という都市が、
未来のものづくりを讃えるために生んだ、
ひとつのオペラである。


菱川勢一映像インスタレーション作品

「srk」

4K Screen Video Installation Art / 27min

イタリア ミラノデザインウィークにて 2017年に展示

写楽――
日本美術史の中でも特異な輝きを放ち、そして忽然と姿を消した謎の絵師である。活動期間はわずか十ヶ月。その短い時間にして、実に百四十五点にも及ぶ作品を世に残したが、その素性は長らく不明のままであり、今なお多くの謎を孕んでいる。

写楽の代表作とされるのは、言うまでもなく役者絵である。彼の描く人物は、顔の輪郭、眼差し、身体の動きに至るまで大胆に誇張され、表情には深い情念が宿る。舞台の一瞬を切り取ったかのような緊張感と迫力が画面全体にみなぎり、人物たちは今にも息を吹き返し、動き出すかのような生命感を帯びている。

その革新的な表現は、当時の浮世絵の常識を打ち破るものであり、日本国内のみならず、時代と国境を越えて多くの人々の心をとらえてきた。私もまた、その魅力に深く心を動かされた一人である。写楽の持つ圧倒的な表現力と、型にはまらぬ視点は、私の創作にも大きな影響を与え、「srk」という作品の出発点ともなった。

写楽が生きた江戸後期――芝居が市井の人々の娯楽であった時代、絢爛たる都市文化のただ中にあって、彼はそこに息づく人々の情念や矛盾、滑稽さをも鋭く描き出した。私はその時代の空気を静かに想像しながら、現代の視点で再解釈し、新たな表現へと昇華させたいと考えた。

本作では、volume1からvolume4までの4つのスタイルを通して、写楽の精神と現代の感性との対話を試みている。これは、かつて写楽が見つめた世界を、今という時代の光で照らしなおす試みであり、また、その視線の先にある新たな可能性への探求でもある。