金沢プロジェクションマッピング 2013/2014/2015
石川県金沢市
Produce + Planning + Direction
金沢城を舞台にしたプロジェクションマッピング。 2013年の初めての開催はしいのき迎賓館の壁面を利用して金沢が誇る伝統工芸をモチーフにした映像演出がなされた。翌2014年は金沢市の北陸新幹線開業事業の一環で開業150日前のカウントダウンイベントとして開催し、2日間で52,000人を動員。この年から聴覚が不自由な方でも鑑賞できる音響装置「Mute Converter(ミュートコンバーター)」を独自開発し世界でも例が少ない画期的な事例となった。翌2015年は初めて金沢市のイベントに県のマスコットである「ひゃくまんさん」が登場し石川県と金沢市が手を組んだコラボレーションイベントとなった
2013年開催時の舞台裏を収めたドキュメンタリー
2014年開催時の舞台裏を収めたドキュメンタリー
「障がい」と「映像」を考えた2014年 Mute Converter 開発ドキュメンタリー
2015年開催時の舞台裏を収めたドキュメンタリー
耳の不自由な方に映像と音楽を届けることはできないだろうか?
かねてよりエンターテインメント、とりわけ音楽や舞台などのライブ空間において「聴覚に障がいを持つ方々がいかに楽しめるようにするか」という課題がある。
DRAWING AND MANUALではこの課題に本格的に取り組むべく、石川県金沢市で予定されていた「金沢城プロジェクションマッピング」の制作において聴覚障がい者に対する観覧対応の研究に取り組んだ。石川県立ろう学校の全面協力を得て、プロジェクションマッピングで上映予定の映像にシンクロする音楽をどのようにして聴覚に障がいを持つ方々へ届けるか、その開発をクリエイターが中心となって進めた。
過去にはライブの席でボディソニック(振動で音楽を伝える装置)を応用した前例がいくつかある。今回も、その方法で伝わることを期待してボディソニック用のスピーカーを用意していた。しかし、いざ協力者の方に椅子の背もたれの部分にスピーカーを装着して試験していただくと、「振動が直に骨に伝わるようで、気持ちが悪い」という反応だった。
さまざまな感想を聞くと聴覚に障がいのある方は、聴覚の代わりとしての触覚の敏感さ・感度が上がっているようだった。このテストの反省を踏まえて、独自にプランケットをデザインし、その中へボディソニックのスピーカーを入れ、足のモモの部分へ柔らかく振動を伝えることを考えた。加えて「何だかリズムだけしかわからない」という感想をいただいていたので、その改良として音楽の音質もイコライジングを施し、より音楽の明瞭さや心地よさが伝わるように工夫し、装置の精度を上げていった。
この装置は「Mute-Converter(ミュート・コンバーター)」と名付けられた。ろう校での何度かの検証を経て、完成と呼べる形にすることができた。本番当日、会場には50,000人という動員数に耐えられるほどの観覧席が設けられた。その最前列に約30席のミュート・コンバーターを設置した観覧席が設けられたのは、クリエイティブにおいて新しい一歩になったに違いない。協力していただいた石川県立ろう学校のみなさんもクリエイター仲間の一員。フィジカルな特徴を超えて、感動を共有する本当の意味でのエンターテインメントへの研究は続く。
金沢城プロジェクションマッピング2013/2014/2015
Creative Director: Seiichi Hishikawa
Art Director / Editor: Yutaka Obara
CGI Designer: Takaharu Shimizu,+Kyotaro Hayashi+Kakeru Mizui
Producer: Takashi Ueno
Creative Agency: DRAWING KANAZAWA
Production: DRAWING AND MANUAL
Behind the Scenes Film
Cinematographer: Yutaka Obara+Takaharu Shimizu+Kyotaro Hayashi+Kazuo Tsujimoto,+Masaki Miyamoto
Editor: Masaki Miyamoto