テーマは「地域と東京」「家族の絆」「地元愛」「高齢化を楽しくするには」
新潟県新潟市西蒲区のプロモーションプロジェクトを武蔵野美術大学とDRAWING AND MANUALが協働し産官学共同プロジェクトとして映画を製作しました。
なぜ地域のプロモーションに映画だったのか?
プロジェクトのスタート当初は西蒲区の名産品や観光地を撮影し、わかりやすくPRする映像をYoutubeなどに公開するというごく普通のプランニングでした。しかし、武蔵野美術大学の学生たちによって西蒲区の魅力を掘り下げていくとそこにはその土地特有の「人と人とのつながり」や「地域の外からの来訪者への優しさ」があるということがわかってきました。そういうものは図解やナレーションでの説明では伝わりません。そういう議論を経てあらためて映像の内容を検討していった結果、人の感情などを表現できるもの=ドラマであることが必要で、適している手法は映画だということに至りました。また同時に地域のプロモーションは外への発信だけではなくその地域で暮らす方々が地元の良い点を再発見することに大きな意味があるという考え方で作っていこうと方針を決めました。
一作目「にしかん」の製作
学生の中から公募をして原案として採用されたのが「東京で暴走族をしていた若者が東京がイヤになって放浪し、新潟にたどり着く。そこで知り合ったのが農家のおじさんとその仲間たち。徐々に若者はおじさんと親しくなっていくが、おじさんの家も様々な悩みを抱えていた。」というものでした。何度かの修正を経て脚本が完成し、映画のタイトルは西蒲区の西蒲(にしかん)を知ってもらおうとそのものズバリ「にしかん」と付けられました。そして出演者のオーディション、ロケハンなどを経て怒涛のように撮影へ。
学生たちが制作した予告編
合宿をしながら撮影
3人の学生監督はいずれも監督初挑戦
プロのスタッフを交えて技術指導
酒蔵での1シーン
東京へ行ってしまった娘 彩香が新潟に思いを馳せるワンシーン
公式サイトでは映画ロケ地を新たな観光スポットとして物語を添えて紹介
撮影後も商業映画さながらの仕上げを目指す
映画というのは撮影で終わりではなく、編集、音の編集、色の調整などの仕上げのほか、宣伝用のポスター、宣伝活動など上映に向けての様々な工程があります。それら全てを武蔵野美術大学学生とプロたちの混成チームで行いました。
美術大学らしく修正を何度も繰り返しながらポスターのデザイン
ポスターの横のタイプも作成
完成後に地元新聞にて掲載
海外へ積極的なPR
学生たちの映画制作の経験と同時に新潟の風情を積極的に海外へPRすることも重要な課題。日本国内とは違ったアプローチで予告編やWebサイトを制作し、発信した
海外向けWebサイトも用意された
海外向け予告編も製作し各映画祭へ送られた
短編映画「にしかん」が世界最大の国際広告コンテストニューヨークフェスティバル2017にて監督賞および撮影賞の2部門受賞
STUDENT WORK - ALL MEDIA: Craft
Cinematography
STUDENT WORK - ALL MEDIA: Craft
Direction
二作目「ハモニカ太陽」の製作へ
1年を通して四季折々の新潟の風景と家族の絆を描く
1作目がニューヨークにて広告賞を受賞し、国内外で高い評価を受けて一定の成果を上げましたが、1作目で描ききれなかった部分を検討し四季の美しい風景を描くことが必要だとスタッフは考えました。実現に向けてプランをし、1年を通しての撮影となるため学業への影響を考慮し、学生の参加は将来映像制作を志す有志の学生に絞られ、DRAWING AND MANUALのスタッフにて制作を進行することとなりました。
地元西蒲区のたくさんの方々が協力
結婚式の撮影では地元の方々がエキストラ出演
記録的大雪の中撮影を断行
連続ドラマスタイルで制作
1年間撮影に費やしその完成を待ってPRすると丸一年西蒲のPRができなくなることを憂慮し、それぞれの四季で1話ずつ順次公開する連続ドラマの手法が用いられました。
第一話 春編のPRヴィジュアル
第二話 夏編のPRヴィジュアル
第三話 秋編のPRヴィジュアル
最終話 冬編のPRヴィジュアル
第一話 春編の予告編
一話公開後の反響が予想以上に多く寄せられ、第二話 夏編の予告編の公開前にティザー予告編が公開された
第二話 夏編の予告編
第三話 秋編の予告編
最終話になる第四話への期待の声が多く寄せられ、最終話の撮影中にティザー予告編が公開された
最終話 冬編の予告編
「レトロ」「季節」が味わえる
新潟の古き良き風情を魅せるため、舞台設定は昭和から平成にかけての時代設定がなされた。また、四季折々の風情を感じられる映像にするため随所に季節感のあるショットが散りばめられた
結婚式の最中 新婦の遥が泥酔し新郎に詰め寄るシーン
家族揃って焼きイモを食べるシーン
雪の中の夫婦桜にて 遥と洋二が愛を確かめ合うシーン
国内外映画祭への出品
一人でも多くの方々へ見ていただくために、地元での上映はもちろん、国内外の映画祭へ数多く出品された
地元西蒲区の上映会には500名を超える入場者がお越しになる
徳島で開催された徳島国際映画祭ではオープニング上映作品として選出された
熱海国際映画祭にて審査員特別賞を受賞
三作目完結編となる「ボケとツッコミ」の製作へ
1作目、2作目で本来のプロモーションの目的である「西蒲区の風情」「人と人のつながり(地元愛や家族愛)」を網羅できた。残る事といえば現在、新潟だけではなくほとんどの地域が抱える課題としての高齢化社会への取り組みについて。本来ならば自治体の取り組みを説明的に映像化するところをやはり映画の表現で描くことに挑みました。コンセプトは「どうしたらボケとその介護とを楽しく付き合っていけるか」。通例、介護というものは辛いこととされ厳しい側面がクローズアップされてしまうが、それでは明るい未来が見えてこない。前2作で出来上がった登場人物の設定に現代における介護を「楽しく」表現することに努めました
1作目の学生が大学を卒業してスタッフとして加わった
実際の新潟の介護施設が全面的に協力
センシティブな題材にスタッフ・役者も真剣に「楽しい」作品を目指した
日本語版予告編
台湾での上映が決まり台湾語(中国語)字幕版の本編・予告編も製作された
父子家庭で父が倒れた 息子を全く憶えていないシーン
何をしていいかわからずとりあえず認知症になった父と漫才を始める息子のシーン
本編の視聴や詳しい内容は西蒲映画オフィシャルサイトまで