WHAT IS MOTION GRAPHICS?
1997年にグラフィックデザイナーのナガオカケンメイと映像クリエイターの菱川勢一が「動くグラフィックデザイン=Motion Graphics」を定義し《Motion Graphics Exhibition》を開催。グラフィックデザイナーが映像表現を手にしたら。映像クリエイターがデザインを味方につけたら。Motion Graphicsというひとつのジャンルが広がり、新たなクリエイターたちが生まれる産業となることを目指してのことでした。
その後、25年以上の年月が経った今、モーショングラフィックスという名称は広く知られるようになり、数々のMotion Graphicsが発表される一方で、定義や表現がやや曖昧にもなってきました。そんな中、菱川勢一をはじめ、Motion Graphics Designerとしてさまざまなクリエイションを生む川島真美、アニメーションMVやデザインやイラストを駆使した独自の世界観を広げる髙橋まりなに、「Motion Graphicsとは?」を聞きました。
DRAWING AND MANUALはMotion Graphicsの新たな可能性を、エンターテインメントやブランド・アイデンティティの表現から都市設計や医療の分野へと発展させることができないだろうかと探究しています。モーショングラフィックスは単なる映像の1つの技法ではなくデザイン活動であることを事例を増やして証明していくべく作り続ける3人のインタビューです。
What is Motion Graphics?
Interview
菱川勢一 | Seiichi Hishikawa
photo: Toshimasa Kumagai(DRAWING AND MANUAL)
— 97年に「Motion Graphics」という名称や定義を発表して、世界中でその言葉が使われるようになりました。あらためて、Motion Graphicsとは何ですか?
流れる映像の中のフレーム一枚一枚がグラフィックデザインとして成り立っていることこそが「動くグラフィックデザイン = モーショングラフィックス」だと考えています。それまで映画界をはじめとした専門的な映像の制作を、グラフィックデザイナーが手掛けることによる、新しくて繊細なデザイン表現が”ひとつの産業”となることを目指しました。
今ではこの名称を知る人が増えましたが、まだまだ産業と言えるほどでもないことと、簡単に制作して低コストに映像をつくる手段になっていることが課題だなあと思っています。
Motion Graphics Exhibition Overview
1997年から2000年まで開催された《Motion Graphics Exhibition》。グラフィックデザイナーのナガオカケンメイ氏がプロデュースを手がけ、菱川勢一が空間構成を担当。1997年は、AppleやAdobeをはじめ数々のメディア企業に協賛を呼びかけ、カイル・クーパー、ロバート・バーグマン=アンガー、ジョン・前田、松本弦人、谷田一郎、田中秀幸、グルーヴィジョンズなどのアーティストが参加
>>More Detail「Motion Graphics Exhibition」について
特集「漫画の擬音を動かす - モーショングラフィックス展」Cosmic Base - WOWOW 1998.7.11 O.A
特集「モーショングラフィックス」ファッション通信-テレビ東京 1998.7.20 On Air
Motion Graphicsは、線や丸、四角などのグラフィックデザインが動くことで、「かわいい」と「こわい」という表裏一体の表現とか、評価としての数値に置き換えにくい感情を生むところがおもしろい。
その点で、ブランドや企業のロゴをMotion Graphicsで表現するのは好事例のひとつですよね。ロゴには、フィロソフィーやコンセプトなど、伝えたいことがたくさん込められています。グラフィックデザインが、シェイプや色などで表現しようとしていたものを、さらに動きからも豊かに表現できるようになったわけです。
デザインという分野の中には、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、というようにそれぞれの代表的なジャンルがありますが、それと肩を並べるようにMotion Graphicsを確立したいですね。
Prelude|Seiichi Hishikawa
幾何学図形だけで四季を表現する実験的な映像。半透明のエレメントが舞い、重なり合い、連綿と新たな造形を浮かべていく菱川のオリジナル作品。二次元の線が立体のエレメントへ変化していく展開、上空を降下しながら撮影しているようなアングル、音楽と共に穏やかに転換していく間(ま)の取り方を繊細に思考して仕上げた。一連の幾何学的造形の動きの中には自然と人工物との共存や植物と人間、鉱物の工作、無機と有機といった対比を表現している
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Airline|Seiichi Hishikawa
簡素な線が曲がり、重なり、集まることで、色彩はうつろい、大気の流れや雲の造形が現れる。悠々と空を舞う穏やかな流れと楽曲の間。呼応し、そこに在るが、目には見えないもの。美術表現《キュビズム》のように、画面の中にあらゆる次元を集約しようと試みたひとつの表現。BPMが一定ではないクラシック曲に映像をシンクロさせることに実験的要素を取り入れた。ヴァージンアトランティック航空の機内映像に採用された
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colors|Seiichi Hishikawa(2012 Original Art)
現在、マサチューセッツ工科大学の教材になっている作品。フェルメールの絵画から色彩情報を抽出し、サウンドクリエイターのヤマダタツヤ氏によるオリジナル音楽を同期させ、有機的かつ抽象的な造形で表現したContemporary Motion Image Art。色彩構成は欧州とりわけオランダ色が強いが、間(ま)の取り方は日本独特のものを意識して仕上げた。Motion Graphicsを経て、次の映像表現を模索していた頃。当たり前にテレビやパソコンが居住空間にある中で、黒く影を放つモニターが「絵画やポスターのような存在として生活に溶け込むと、どうだろうか?」と思い立ち、つくり始めた。
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一方で、日本におけるMotion Graphicsを考えた時に頭をよぎったのは伝統工芸でした。古くは土器から始まり、陶芸や蒔絵といったもの、染めや織物など、手仕事をベースにした工芸という技法からくる造形美です。
まあ、このMotion Graphicsっていわば 現代の工芸だよなあと、いつもつくりながら思っていたので、伝統工芸と重なる部分を感じたわけです。
やはり世界が評価するように、日本の美学や美意識の土壌が産むものに価値があると思って励んでいます。
何より、モーショングラフィックスってなんのお役に立ててるのだろうっていうことが一番の気掛かりかな。
役にたつものをつくらないと必要なくなってしまうので。なくなるには惜しい分野ですよね。感覚的にはまだポテンシャルの半分も使ってない気がします。
菱川勢一のWEBサイトでは、Japan Motion Imageとして、日本映像工芸の考えと共に、古来の美品を蒐集して紹介している
>>More Detail: https://seiichihishikawa.info/
画像出典 :Colbase https://colbase.nich.go.jp
本インタビューは《DRAWING AND MANUAL Original Zine theme ”The Motion Graphics” June 2023.》からの転載です
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